白蛇のはなし

 沿線の終着近い山には台所の神様が住んでいて、たまに山歩きがてら参る。駅からひたすら坂道を二キロほど歩くと神様を祭っている神社に着く。






 参道にはお茶屋さんや乾物屋さんやお漬物屋さんやバラックの占い屋さんがある。その中に籠をたくさん売っている雑貨屋さんがあって、その店先には水槽に入った白蛇が二匹いつもくるくる巻き付いている。






 二匹の名前は「ちまきちゃん」と「おもちまるくん」肌がすべすべで目がウルウルでペロはちろちろかわいらしい。いつも仲が良くてどこからが自分か分かっていないみたいに絡み合っている。いつもほほえましくその様子を見てはなごんでいた。






 このたびそんな「ちまきちゃん」と「おもちまるくん」に悲しいお知らせがあった。店先の水槽の下にでかでかとマジックで書いてあったその内容は、



「長年ふたりをかわいがってくれてありがとう。ふたりは男女のペアのはずだったのだけど、このたび「ちまきちゃん」が男だということが判明しました」



 というのだ。なんてこった、ちまきちゃん!かわいいカップルと思っていたら、おっさんとおっさんだったなんて。これから二匹をどういう目で見たらいいのか、分からなくなった。あと、性別が判明した経緯も気になる。